ICTの目

ICTに関する話題を中心に、気の向くままにボソボソと呟いています

暮らし、務め、稼ぎ

その昔、農村社会には3つの仕事があったそうだ。
●「暮らし」 自分たちの衣食住などに関する自給生産のこと。生活に必要な物はなるべく自分たちで賄うようにしていた。
●「務め」 地域や属する共同体の中でお互いに協力して支えあう行い。
●「稼ぎ」 収入を得ること。現代では、「仕事」と言えばこれを指すようになった。

現代は貨幣経済社会なので、自給自足するよりも「稼い」で生活に必要な物を買った方が遥かに効率的だ。
だから「暮らし」の仕事はなくなり、「稼ぎ」で得た貨幣によって、必要な物を買う。

同じように、「務め」によって賄われていた事も、サービスとしてお金を払えば買える。
では、買えない人達はどうするのか。
様々な理由によって、「務め」を供給して社会に奉仕/貢献することは難しいが、何らかの助けを要する人々はどうすれば良いのだろう。

資本主義社会では、勝者が富み、益を被る様になってしまった。
貨幣経済の社会が、「稼ぎ」至上主義を後押ししたとも言える。

しかし、訳あって「務め」を供給出来ないが助けが必要な人々の為に、
社会奉仕活動である「務め」は必要だ。
自分が「助け」を必要としていないとしても・・・


JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」をデザインした水戸岡氏が、その著書の中で著している。
稼ぎ仕事は「米仕事」、務め仕事は「花仕事」
そして、以下のようなお話も・・・

例えばですよ、JR九州であるとき、ぼくが電車の床を木にしましょうっていう提案をしました。でも担当者は「いや、水戸岡さん、木はコストが高いしメンテナンスが大変で、気密性がないし加工性も悪いから、樹脂の長尺シートにしてほしい」って、そう言います。
彼はそれをJR九州の社員として発言しているわけですが、自分の家庭ではおやじをやってるわけですね。もし君が息子のために電車を造るなら、床を木にするか、樹脂にするか、どっちにするの君はって聞いたら、「そりゃ水戸岡さん、当然木でしょう」って答えたんです。「お前さっきさ、樹脂って言ったじゃないか。会社員の答えと、おやじとしての答えが違うのはおかしいじゃないか」って言ってしまいましたが。
人生は1つしかないのに、この矛盾が日本の国をダメにしてるんでしょう。会社での答えと家に帰っての答えが違うのでは、ハッピーにならない。これがこの日本の、いろんな問題を全部生んでいるんですよ。結局は、人は企業人でいるだけでは済まないんだし、半分半分の生き方をした方がおのずと正しい答えを見つけられる。
企業の立場でものを決断すると間違える可能性が高いですよ。できれば、自分たちの子どもと次の世代を考えて、それでものを決めると、ほとんど間違いがない、正しい決定ができると思います。それは目先の利便性や経済性を優先することではなくなるんで、長期の展望でものを決めていくから、正しい答えが出るんですよ。


資本主義の競争原理だけではない、+αを持つ豊かな社会に成熟する事を望んで止まない。