ICTの目

ICTに関する話題を中心に、気の向くままにボソボソと呟いています

「最愛なるニレの木さま」 ―心温まるIoTのお話―

オーストラリア・メルボルン市でのお話です。

「今日、私はセント・メアリー大学を卒業しました。そして、あなたの(枝にじゃなくて)その光輝く美しさに心打たれました。あなたはこれからもずっとこんなメッセージを受け取り続けるでしょう。あなたはそれほどまでに素敵な木なのだから。」

これはメルボルンの大学を卒業する学生から「緑葉の楡(ニレ)」宛に書かれた手紙の抜粋で、メルボルン市民と街の木々との間で今なおやり取りされ続けている幾千ものメッセージの一つなのです。

メルボルン市では街の木々について気付いた事を市民が簡単に連絡出来るように (樹木の病気や傷みなど)、2013年に市当局が木々にID番号とメールアドレスを付与しました。

そのうちに人々は、「工事で枝を傷付けた事へのお詫び」や、「光合成への感謝」、「木の性別に関する質問」や「時事問題への投げ掛け」など、様々なメッセージを木々宛に送る様になりました。

はては「米ミシシッピ州北東部の小さな農場の樫の木(の代理人)」からも・・・。

 

親愛なる緑葉のニレ様 (To: Green Leaf Elm, Tree ID 1022165)

あなたがセント・メアリーでの暮らしを気に入っていればいいのですが・・・。
私も大抵の場合はここが好きです。
もうすぐ試験がやって来るので、必死に勉強してるはずなのだけれど・・・。
あなたには試験なんてありませんよね、だって木だから。
私達には共通点があまりないので、そろそろ話す事がなくなってきました、そもそもあなたは木なのだし。
でも、ここで一緒にいられて良かった。 ありがとう、Fより

やがて木々から返信のメールが送られるようになります。

こんにちは、Fさん
私はここでの暮らしが気に入っています。あなたには試験を立派にやり遂げて欲しいと思っています。
自然は、人々が積極的に学ぶように影響を及ぼす事が出来ると、研究によって示されています。だから、私があなたの学びを鼓舞出来ればと思います。
では、成功を祈っております。 緑葉の楡より (Green Leaf Elm, Tree ID 1022165)

M2Mから発展した本当のIoTじゃなく、いわばH2H(Human to Human)版IoTといった感じのお話ですが、モノを擬人化すれば、そこに人と人とのコミュニケーションの新たな入口が出来上がるのですね。

物質的な豊かさを追求するM2MのIoTは 今後の経済発展に必要不可欠ですが、
心を豊かにしてくれる こんなH2H版IoTも捨てたものじゃありませんね。

"When You Give a Tree an Email Address"
"I was struck, not by a branch, but by your radiant beauty. "は、
「枝に(鞭)打たれる」と、「光り輝く美しさに(心)打たれる」を、
「打たれる」で引っ掛けたのですね(^^;

アナログ的なIoT・・・「どこそこの今のお天気」なども同じような仕組みですが、モノの擬人化を上手に使って地域興しのコミュニティが形作れたら、なんだか楽しそうです。